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「……悪いが、床を用意してくれないか。今宵は眠れそうな気がするんじゃ」
吉田の言葉に、与三郎は目を丸くする。
「ほう……珍しいですのう。直ぐにご用意しますけえ」
──繊細で神経質なこの方が、こねえな事を言うなんて京に来て初めてのことじゃ。一体何があったのやら。
忠義に厚い与三郎は、https://www.easycorp.com.hk/en/virtual-office 何かがあったのだろうと内心勘繰った。運の悪いことに、近々自身は新撰組へ間者として入隊しなければならない。つまり、おかしな人物が
「
「へ近付いたとしても始末が出来ないのだ。
何も無ければ良いが、と小さく息を吐く。
また一方で、夜も更けた頃。八木邸の二階の小窓から月を眺める者の姿があった。
「……吉田、栄太郎さんか」
窓の桟に両肘をつき、手のひらに顎を乗せながら小さく息を吐く。そっと目を瞑れば瞼の裏には昼間の出来事が浮かんだ。
『……君、この刀。もしかして、"薄緑"か』
その言葉に続いて、吉田の素肌を思い出してはみるみる顔を赤らめる。
「って、何を思い出してんのッ」
記憶を手で払うように動かすと、火照った頬を鎮めるように手の甲をそれへ当てた。
──それにしても、まさか薄緑を知る人が現れるなんて。
妖刀だと言われても、ただの御伽噺としか思っていなかった自分がいる。だが、それを知る……それも似たような物を持つ者現れたことで一気に信憑性が増した。
桜花は左胸にある痣へ、寝巻きの上から手を当てる。
『……とにかく、この痣は妖刀を持つ者の証なのではないかと思う。先程、追い掛けられた時にこれが疼いて仕方が無かった。……もしかすると、引き付けられたのではないかな』
確かに吉田の言う通りに、出くわす直前にきゅうっと痛んだ。
「まるで、磁石みたい」
二人だけの秘密のようだと胸が高鳴る。
「……また、会いたいな」
無意識のうちにそうポツリと呟いては、ハッとした。何を言っているのだと首を大きく振る。
──何で女みたいなことを思っているんだ、私は。今は男として生きなきゃいけないのに。馬鹿馬鹿しい。
早く寝ようと床につくと、腕を額の上へ乗せた。寝心地が悪いのか、ごろりと横へ向く。
目の前の壁を見詰めながら、ゆっくりと眠りが訪れるのを待つ。
──そうだ、藤婆なら刀のことを何か知っているかも知れない。
許可が降りれば会いに行ってみようと思いつつ、重くなった瞼を閉じた。 幾日か経ち、漸く土方から遠出の許可を得た桜花は藤の元へと訪れていた。その供にと宛てがわれたのは、内密に見張り役となっている沖田では無く斎藤である。沖田は巡察の隊務があるため、非番だった斎藤へ白羽の矢が立ったのだった。
「まあ、桜花かい。心配していたんだよ」
藤は桜花の来訪を喜び、暖かく迎える。居間へ通され、温かな湯気の立つ湯呑みが前へ置かれた。
「……で、今までどうしていたんだい。隣のお侍さんは?」
「色々あって、新撰組で使用人として働かせて頂いています。こちらの方は副長助勤の斎藤先生です」
「新撰組……」
その名を口にした途端、僅かに藤の声音が強ばる。大方、市中での噂を聞いているのだろう。
桜花は斎藤の横顔を盗み見たが、この様な反応は慣れていると言わんばかりに眉ひとつ動かしていなかった。
「藤婆、新撰組の皆さんは噂よりも良い人達ですよ。剣術に明るくて、真面目な方が多いです」
「そうかい。私も江戸の出だからね、そこまで悪い印象は無いんだ。そこのお侍さん、江戸者は京に住みにくかろ?」
一言も話していないのにも関わらず、藤は斎藤を江戸から来たと見抜く。驚いたような表情をしながらも、斎藤は視線を合わせた。
「……確かにやりにくいと思うことはあります。ですが、物見遊山で来た訳では無い故。ただ務めを果たすのみ。……失礼ですが、江戸のどちらから?」
「……