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「入江の役目も楽やないのぉ。」
赤禰は呑むか?と徳利をちらつかせた。入江は有難くと赤禰の隣りに腰を下ろして別にこの役目は苦じゃないと笑った。
「私は三津がみんなを幸せにする手助けを側でして,三津が疲れた時に休める場所でおれたらいいそ。みんなを幸せにして笑っちょるのを見るのが私の幸せやけぇ。」
そう語る入江がすでに幸せそうに笑うから,高杉も赤禰も変わった奴だと笑った。https://www.easycorp.com.hk/en/virtual-office
「私が三津に救われたように三津は桂さんに救われたけぇ桂さんやないといけんのは分かる。」
でも桂がちょっと抜けてるから心配なんだと言う。だからその分を補わなければ。
辛かった過去が少しでも報われるように,三津の過去を自分が包んでやれるようにこれから必死に生きてくんだと入江は笑った。「ちょっと長居し過ぎたけぇそろそろ帰るわ。」
夕餉の時に文から告げられた。あまりにも唐突で広間は一瞬静まった。
「居心地良くてついついのんびりしてもたけど私も実家の母の手伝いあるし。」
「そうですか……。寂しい。」
しょんぼりする三津が捨てられた子犬のように見えて入江と赤禰はその頭を撫で回したい衝動に駆られた。
「また入江さんに連れて来てもらったらいいそ。フサちゃんと待っちょる。」
文は大丈夫大丈夫また会えると三津をぎゅっと抱きしめた。
“あーいいなぁー……”と心の声をだだ漏れにして入江と赤禰が羨望の眼差しを向けた。それを見て文はにやりと片口を上げた。
「文ちゃんそのまま連れて帰るのはやめてね?」
「あら桂様お帰りなさいませ。大丈夫です今回は連れて帰りませんけど,もしまた何かあるようでしたら萩に呼び寄せて帰しません。
それはそうと今日はこちらで夕餉ですか?」
帰って来ると聞いてないですと冷たく言い放った。桂は相変わらず冷たいなと苦笑しながら報告があって来ただけだとその場に腰を下ろした。
「報告?何やまた面倒事か?」
高杉が改まった報告は聞きたくない件の方が多いと愚痴を溢した。
桂からの報告ならば心して聞かねばと全員が姿勢を正して体ごと向けた。
文と三津達もその場に正座して真剣な顔を向けた。
「いや,そこまで改まられると……。藩の命令で改名する事になっただけで……。」
「改名?名前変わるんですか?」
三津が何で何で?と桂を見つめた。
「幕府から罪人として手配されても桂小五郎と言う名の人物はいないと言い張る為の屁理屈だよ。」
「それで何て名前なん?」
幾松が興味津々に聞いた。変な名前なら笑ってやるとすでににやにや笑っている。
「木戸貫治。」
「ふっ!似合わん。」
「分かってるよ。私だって慣れないしやだよ。でも藩命だから仕方ないだろ。」
けらけら笑う幾松に不満げな顔で返した。
「もう小五郎さんじゃないんですか。」
またも三津はしょんぼりしてしまった。別に名前で桂自身の内面が変わる訳ではないが,もう桂小五郎と言う名が存在しないのが酷く寂しかった。
「慣れるまで戸惑うと思うが呼んでるうちに慣れてくるから……。」
「嫌や呼びたくない。」
珍しく三津が拒否してぷいっとそっぽを向いた。それには誰もが目を丸くして不貞腐れた子供のような三津を見つめた。
「三津さん別に名前変わるなんて珍しい事やないぞ?」
高杉がそう言っても三津はむくれたままだった。「そうやで?主人も通称は義助とか色々あったし吉田さんも栄太郎やったし。」
文もそのうち慣れると言うが三津が泣き出しそうになってきたからそれ以上言葉をかけるのをやめた。
「フサは姉上の気持ち分かります。私も兄上の改名時には泣いて困らせました。兄は兄で変わりないのですがそれでも大好きな兄ではなくなってしまった気がして嫌なのです。
兄上はいつも通りの兄上でしたが私には別人に思えました。姉上も戸惑ってらっしゃるのですよね?」
フサの言葉に三津はぼたぼた涙を零した。
「分かります分かります。あっちでフサと一緒にお話しましょう。」
フサは三津の手を取って広間から連れ出した。